March 2024
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ウクライナや中央アジア諸国などの海外のおいしい食品を日本へ紹介
ウクライナやその近隣の国々、あるいは中央アジア諸国の食品の輸入や、その販売を事業として手がけるウクライナ出身の宮部(みやべ)ヴィクトリアさん。東京・銀座で輸入食品専門店「赤の広場」を営み、母国ウクライナや中央アジア諸国など海外の食品を日本の人々に届けている。
ウクライナ東部ドネツク出身の宮部ヴィクトリアさんは、日本人との結婚を機に2000年に来日。当初、モデル事務所を立ち上げたが、転機が訪れたのは2008年。母国で買ってきたシュガーフリーのチョコレートをお土産(みやげ)として日本の友人に配ったところ、とても喜ばれた。もともと母国では経済を大学で学んでいてビジネスに興味があったため、この経験をきっかけに輸入業に方向転換することを決意。友人たちに好評だったチョコレートやジャムをはじめとした"故郷の味"を日本へ輸入して、商品として大手百貨店や旅行会社などへ卸すようになった。
それらの商品の人気もあり、その後事業は順調に拡大。ロシア、ベラルーシ、アルメニア、カザフスタン、タジキスタンといった旧ソ連諸国から輸入したさまざまな食品を取り扱うようになった。2011年の東日本大震災の際は、トラック3台分の輸入した食品を被災地に寄付する活動も行った。その後、もっと気軽に商品を手に取ってもらえるようにとインターネット販売を始めたほか、東京・銀座に実店舗「赤の広場」をオープン。
「日本でウクライナやロシア、中央アジア諸国の食品を扱う専門店は少ないので最初はうまくいくか不安でしたが、商品そのものを見てもらいやすいお店をつくりたいと思いました。当初は在日ロシア人をターゲットに考えていましたが、実際は日本人のお客様がたくさん来てくれました」
ヴィクトリアさんが日本に輸入した食品の中でも一番人気となったのが、チーズをチョコレートでコーティングしたバーのような形状の「スィローク」というお菓子だ。ロシアでは定番のお菓子だが、以前は日本でほとんど知られていない食品だった。ヴィクトリアさんは、そこに目を付けてスィロークの販売を始めたところ、リピートで購入する人も多く、売れ行きも伸びていった。
しかし、近年は輸入手続きの関係でその取り扱いを停止せざるを得なくなっている。また、2022年に始まったロシアとウクライナの問題や円安も経営に大きな影響を与えており、新たなヒット商品を発掘することが急務だ。そんな中でも、ヴィクトリアさんはこうした困難な状況も楽しもうとしている。
「まだ日本で知られていない魅力的な食品を見つけて、日本で紹介していきたい。そのために、今は中央アジア諸国などいろいろな国々を周っています。現地で気になる食品を見つけたら必ず生産現場を訪問して、安心安全が守られているかなどを自分の目で確認し、本当に良いと思ったものだけを商品として取り扱っています。2024年春からはカザフスタンとリトアニアで見つけた食品をお店の新商品として販売する予定です。きっとたくさんの人が『おいしい!』と喜んでくれる味だと思いますよ」
20年以上日本で暮らしてきたヴィクトリアさんにとって日本はもはや、海外に出張に行っても「早く日本に帰って日本食を食べたい」と感じるほどに当たり前でなじみ深いものになっている。これまでさまざまな挑戦を続けてきたヴィクトリアさんだが、やりたいことはまだまだ尽きないという。
「アイデアはたくさんあります。例えば、店舗に国別の商品棚をつくることが今の目標の一つ。そのために、もっといろいろな国でよい商品となる食品を見つけてきたいですね。ビジネスをしていると困難な状況で明日が見えないような日もありますが、一歩一歩夢を実現していこうと前向きに考えています」
注記:国名は略称で記載している。