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March 2024

「沖縄伝統芸能の殿堂」―組踊、琉球舞踊などの公演と普及活動―

  • 組踊「銘苅子(めかるしー)」。組踊の創始者玉城朝薫(たまぐすく ちょうくん)(1684~1734)が、琉球(りゅうきゅう)に伝わる羽衣伝説を題材に創作した。 Photo: 国立劇場おきなわ
  • 沖縄芝居の鑑賞教室の一例。国立劇場おきなわでは、伝統芸能に対する理解を深めるために、「親子のための鑑賞教室」など、さまざまな普及公演を行っている。 Photo: 国立劇場おきなわ
  • 普及公演「琉球舞踊鑑賞教室」 Photo: 国立劇場おきなわ
  • 首里城ガイドツアーでの組踊(くみおどり)ワークショップ
    Photo: 国立劇場おきなわ
組踊「銘苅子(めかるしー)」。組踊の創始者玉城朝薫(たまぐすく ちょうくん)(1684~1734)が、琉球(りゅうきゅう)に伝わる羽衣伝説を題材に創作した。 Photo: 国立劇場おきなわ

「日本博2.0」は、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の機運醸成やインバウンド需要の回復、国内観光需要の一層の喚起を目指しつつ、「日本の美と心」を体現する我が国の文化芸術の振興及びその多様かつ普遍的な魅力を国内外に発信している。国内の文化施設、芸術団体などさまざまな主体が多種多様な事業を実施、参画している一大プロジェクトだ。多くの事業の中から、今月号は「国立劇場おきなわ」の取組を紹介する。

300年の伝統をもつ組踊などの保存と振興

国立劇場おきなわは、沖縄本島の南部地域と中部地域の境目にある浦添(うらそえ)市に2004年1月に開場した。以来、20年余りにわたって沖縄伝統芸能の公演を行っている。公演されるのは、300年の伝統をもつ歌舞劇の組踊(くみおどり)*をはじめ、琉球舞踊(りゅうきゅうぶよう)**、沖縄芝居***、三線(さんしん)音楽****などだ(写真参照)。

それとともに、特に組踊の保存・振興に向けて、体系的なカリキュラムのもとで後継者を養成する研修事業に力を入れている。さらに、組踊に関する新旧の台本や衣装、小道具などの貴重な資料を収集するとともに、沖縄の民俗芸能に関する資料なども幅広く収集・公開している。また、沖縄の伝統芸能と関わりの深い本土の芸能、インドネシアなどアジア・太平洋地域の芸能団体を招へいし、公演などを行ってきた。

沖縄芝居の鑑賞教室の一例。国立劇場おきなわでは、伝統芸能に対する理解を深めるために、「親子のための鑑賞教室」など、さまざまな普及公演を行っている。 Photo: 国立劇場おきなわ

2020年度に参画した日本博では、外国人を含めた観光客を主な対象として、沖縄伝統芸能への理解を深めるために和英併記のパンフレットや多言語PR映像を制作した。公演においても、組踊や琉球舞踊の見どころや背景などを説明するために多言語対応のオーディオガイドや字幕タブレットを導入した。公演前に行った英語通訳付きのワークショップも好評だった。

普及公演「琉球舞踊鑑賞教室」 Photo: 国立劇場おきなわ

開場20周年を迎えさまざまな記念公演を実施

日本博2.0では、こうした取組をさらに発展させ、沖縄に向かう旅客機内で沖縄伝統芸能を紹介するCMを流し、英語通訳付きのバックステージツアーや観光拠点でのワークショップなどを開催してきた。例えば、沖縄美ら島(ちゅらしま)財団との連携により、沖縄観光でも人気の高い那覇(なは)市の首里城(しゅりじょう)*****のガイドツアーにおいて、組踊ワークショップ実施した。このワークショップには外国人を含めて約250名が参加した。

首里城ガイドツアーでの組踊(くみおどり)ワークショップ Photo: 国立劇場おきなわ

2024年1月に開場20周年を迎えた国立劇場おきなわでは、この1年間、さまざまな記念公演や鑑賞教室などを企画している。沖縄は、地理的・歴史的にアジア・太平洋地域の交流のハブの位置にあった。その沖縄に根付いた伝統芸能の鑑賞を通じて、広大なアジア・太平洋地域の文化交流について考えることは大きな意義があるだろう。

開場20周年を迎えた国立劇場おきなわ
Photo: 国立劇場おきなわ

「国立劇場おきなわ」のWebページ » https://www.nt-okinawa.or.jp/

* 組踊はせりふ、音楽、所作、舞踊によって構成される歌舞劇。琉球古来の芸能や故事をもとに創作したという。
** 組踊と同時期に、古典舞踊の基礎が固められたが、その後に民謡や俗謡を取り入れた新しい舞踊「雑踊(ぞうおどり)」や「創作舞踊」が生み出され、総称「琉球舞踊」となって、庶民芸能として定着した。
*** 1880年代頃に那覇(なは)に芝居小屋ができ、庶民の風俗と人情を描いた「歌劇」や「方言せりふ劇」が上演されてきたが、それを「沖縄芝居」と言う。
**** 14世紀末頃に中国から伝来した弦楽器「三線(さんしん)」を使う古典音楽や民謡。
***** 琉球王国(1429~1879)の王城(おうじょう)。1945年の戦災後、1992年に再建され世界遺産にも登録された。2019年の火災で正殿などが消失したが、現在、再建・修復が進められている。