(イントロダクション:女性ナレーター)
2023年12月13日から旅館業法が変わりました。これにより、ホテルや旅館の営業者は、カスタマーハラスメントに当たる特定の要求を行った人の宿泊を拒むことができるようになりました。ホテルや旅館が、宿泊する方にとっても、そこで働く方々にとっても、気持ちよく過ごせる場所となるように、改正のポイントをご紹介します。
(本文:Q.女性ナレーター/A.男性ナレーター)
Q1:そもそも旅館業法ではどんなことが定められているのでしょうか?
A1:「旅館業法」は、1948年に制定された法律で、公衆衛生や国民生活の向上などの観点から、伝染性の疾病にかかっていると明らかに認められるなどの宿泊拒否事由に該当する場合を除き、ホテルや旅館の営業者は、宿泊を拒んではならないとしています。
Q2:なぜ改正されることになったのでしょうか?
A2:近年、いわゆる「迷惑客」などホテルや旅館の営業者が対応に苦慮する事例が見られるようになりました。こうした現状も踏まえて旅館業法が改正され、2023年12月13日に施行されました。
Q3:この改正ではどのようなことが変わったのでしょうか?
A3:ホテルや旅館の営業者は、宿泊施設に過重な負担となり、他の宿泊者に対する宿泊サービスの提供を著しく阻害するおそれのある要求を繰り返す「迷惑客」の宿泊を拒むことができるようになりました。
Q4:具体的には、どのような行為が宿泊拒否の事由に該当するのでしょうか?
A4:例えば、宿泊料の割引や部屋のアップグレードなどを不当に要求するといった他の宿泊者に対するサービスと比較して過剰なサービスを行うよう繰り返し求める行為、宿泊サービスに従事する従業員に対し、土下座などによる謝罪を繰り返し求める行為、対面や電話などにより、長時間にわたって、又は叱責しながら、不当な要求を繰り返し行う行為などが新たな宿泊拒否の事由に該当します。営業者がこれらに該当する要求を求められ、応じられない場合は、まずは「そうした要求には応じられないが、宿泊自体は受け入れること」を説明し、それでもなお同じ要求を求められる場合は、宿泊を拒むことができるとされています。なお、営業者の故意・過失により損害を被り、何かしらの対応を求めることは宿泊拒否の事由に該当しません。
Q5:宿泊する際には従業員の方に対して思いやりを持って接したいですね。一方で、障害のある方など、宿泊の際に一定の配慮を必要とする方が、社会の中にある障壁の除去を求めるといったこともあるかと思います。そのような場合も新しい宿泊拒否の事由に該当する可能性があるのではないでしょうか?
A5:いいえ。障害のある方が社会の中にある障壁の除去を求めること、例えば、いわゆる「合理的配慮の提供」を求めることは、新しい宿泊拒否の事由には該当しません。合理的な配慮の求めに当たると考えられる例として、視覚障害のある方が部屋までの誘導を求めること、車椅子利用者が車椅子で部屋に入れるようにベッドやテーブルの位置の移動を求めることなどが挙げられます。
Q6:他にも新たな宿泊拒否の事由に該当しない例はありますか?
A6:はい。医療的な介助が必要な障害者や車椅子利用者などが宿泊を求めること、介護者や身体障害者補助犬の同伴を求めること、障害のある方が障害を理由とした不当な差別的取扱いを受けたことについて謝罪などを求めること、障害の特性により、その場に応じた声の音量の調整ができないまま従業員に声をかけるなど、その行為が障害の特性によることを把握できる場合なども、新たな宿泊拒否の事由に該当しません。
Q7:安心しました。他に改正されたことはありますか?
A7:感染症法上、危険度の高い感染症を「特定感染症」とし、この「特定感染症」が国内で発生している期間に限り、営業者は、法令上の根拠をもって、宿泊者に対し、特定感染症の症状の有無などに応じて、必要な限度において感染防止に必要な協力を求めることができるようになります。また、宿泊者は、正当な理由がない限り、その協力の求めに応じなければなりません。
Q8:特定感染症とは、具体的にはどういったものですか?
A8:特定感染症とは、エボラ出血熱などに代表される「一類感染症」、SARSなどの「二類感染症」、新型インフルエンザ等感染症、新感染症及び指定感染症を指します。なお、五類感染症となった新型コロナウイルス感染症は、特定感染症には当たりません。
Q9:他にも、「宿泊者名簿」について改正されたと聞きました。
A9:はい。宿泊者名簿の記載事項について、「職業」が削除され、「連絡先」が追加されました。宿泊者は、営業者から請求があったときは、氏名や住所に加えて、連絡先も告げなければならないこととなりました。
(エンディング:女性ナレーター)
今回の法改正は、ホテルや旅館が誰もが気持ちよく過ごせる場所になることを目指したものです。より詳細な改正のポイントについては厚生労働省のホームページで確認できます。「厚生労働省 旅館業法改正」で検索し、確認してみてください。また、宿泊者側が営業者から不当な宿泊拒否などをされた場合や、営業者側が宿泊拒否などに関して悩んだ場合には、地方自治体やその他の相談窓口にご相談ください。詳しくは「旅館業法の相談窓口」で検索してみてください。